おひとりさま

@yuu_uu_ 本の感想ブログ

グッドモーニングショー

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公開初日!  見てきました~。

予告では、ワイドショーならでは、生放送に付き物のドタバタコメディみたいなイメージでしたが、

ワイドショーVS報道の対立関係から、それぞれの仕事に対する誇り、矜持みたいなものが受け取れて熱くなる場面もあり、

夫として父親としてキャスターとして、最後は一人の男として立てこもり犯と向き合い、人間ひとりの命とはどう扱われるべきかを模索する主人公(中井貴一さん)の言葉ひとつひとつにグッと涙腺揺さぶられる場面もあり。

 

今回も、良い映画見たなー!  と思えました。

 

個人的に、濱田岳木南晴夏は、決して目当てで見に行くわけじゃないのに見る作品片っ端から脇役固めてるイメージがあって、気付いたら大好きな役者さんになってたうちの代表です。

世間的にも主役級ではないけど、脇役でいてくれたら作品が安定するというか、任せてたら安心して見られる立ち位置にいるような気がします。

今作このふたりがバッチリ決めてくれててものすごく嬉しかった!

主題歌KANA-BOONだったのも意表を突かれました。だいすき。

 

あと志田未来ちゃんのアナウンサーぶりはハマってたなあ~~声が綺麗だし、相当練習積んだのでしょうか、本職にも負けず劣らずの滑舌でびっくりしました。こんなに大きくなって……、もう立派な女優さんですね。

長澤まさみも安定。それにしてもこの人が「君の名は。」で声優やってたなんて、改めて考えると凄いなあ。声優は声優で充分やっていけそうだと思えるくらい上手だった。長澤まさみだって教えられなきゃ気づかなかったしなあ……。

 

 

中井貴一見たさに行ってきましたが、嬉しい誤算ばかりでお得に感じた映画でした!

 

マインドフルネス、というものについて実践

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「マインドフルネス瞑想」という言葉、最近よく見かけるようになりましたね!

今では書店でも、いわゆるスピリチュアルなコーナーだけではなく、ビジネス書や自己啓発のコーナーにもたくさん並べられています。

「瞑想」っていうといかにも怪しい雰囲気だし、そっち系のやばい人たちがこぞってはまり込んでるイメージが強かったと思いますが、今ではもう科学的にもその効果が認められているみたいです。

これだけ関連書籍が次から次へと出てるのを見ると頷ける気がします。

 

 

私自身も少し前からマインドフルネスには興味があって、いくつか関係する本を読みました。

中でも写真の2冊が特にわかりやすく、実際にやってみるととても簡単だったのでおすすめしたいと思います!

 

「マインドフルネス瞑想入門」は、タイトル通り、初心者向けの指南本です。

瞑想導入のためのCDも付いていて、最初はこれを聞きながらやると自然と瞑想に入っていけます。(この先導する声に違和感があり聞きにくいというレビューもありますが、私はむしろ落ち着いた男性の声は安心できて聞きやすいと思いました)

 

「世界のエリートがやっている最高の休息法」は、体の休息ではなく脳の休息を扱った本。マインドフルネスというものを主軸にして、いかに脳を休めるか、その効果はどれほどのものかといったことを、ストーリー形式にしてわかりやすく書いてくれています。

 

 

半年前くらいから少しづつやり始めて、しばらくは慣れなくてやったりやらなかったりでしたが

ここ1ヶ月くらいは毎日、朝夜10分ずつの瞑想を心掛けています。

習慣にしてしまえると、やらないと反対に体が落ち着かなくなってきます。

 

 

以下、実際にやってみて感じている効果を箇条書き!

 

・体の調子が良くなった(長年の肩凝りが確実に良くなった)

・朝すっきり起きられるようになった、二度寝しなくなった(もともと朝は強い方だが、更に睡眠の質が良くなった)

・仕事の突発的な事案にも落ち着いて対応できる、いつもは慌てて空回りする場面でも冷静になれるようになった

・周りをよく観察する余裕ができ、必要な時に必要なことができるようになった

・他人と会話する時に必要以上に緊張しなくなった、落ち着いて受け答えできるようになった

 

 

体の調子が良くなってきたことも、もちろん嬉しいですが

新しく始めた仕事や、元来の気質(消極的、人見知り、他人と会話する時に目が見られない典型的なコミュ障)が悩みの種だったので、改善の芽が見えてきたのは嬉しい限りです。

 

 

やり方自体は、

1.背筋を伸ばして座る

2.目を閉じ、ただ呼吸をする

3.呼吸に集中する

 

これだけです。

姿勢とか呼吸の仕方とか、さらにこうした方がベストっていうルールはあるみたいですが

一般的に日常で実践するならこの基本をおさえておけば十分だと思います。

 

そのほか、歩行瞑想や食事瞑想など、ただただ自分の今していること、体の動作に注目するという瞑想方法もあります。

根底にあるのは、「過去や未来ではなく、いまここにある自分、現在に思いを馳せる」というスタンス。

 

どうしようもできないことをあれこれ考えて消耗するよりは、今の自分に立ち返りましょうということ。

 

 

この考え方は、簡単なようにみえて、自然と身につけるには膨大な時間がかかると思いますが

1日のうち少しの時間だけでも、今の自分、現在のことに集中することを心がけていれば

少しづつでも変わっていくと思います。

 

大体の悩みって、過去か未来に関することですもんね。

それよりも、現時点で自分に何が出来るのかを考えた方が建設的。

あらゆるところで言われ尽くされてきたであろうシンプルな考えですが

体感覚で実感していくのに、このマインドフルネスはすごく効果的だろうな、と思います。

 

 

1分でも2分でも、とにかく毎日「続けて」いくことが大事!

私もこの先、1年2年と続けていきたい習慣のひとつです。

また目に見えて実感できる効果が現れしだい、その都度記事を書こうと思います。

映画「聲の形」

久々の更新になりました。

このところ、仕事を変えたおかげで自分の時間がきっちり取れるようになったので、週末はめっきり映画三昧です。

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早起きして、こーんな良い天気の中を散歩なんかしちゃってから、行ってまいりました。

「聲の形」!(2回目)

 

 

原作が好きで、おおいに期待しつつ見に行ったら思っていた以上にすこぶる好みで、我慢しきれず2回目見に行ってきた次第です。

あと1~2回行ってもいいと思えるくらい素晴らしかった。ほんとうに良かった、満足も満足、大満足!

 

 

ざっとした話のあらすじとしては

「小学生の頃、興味本位でいじめちゃった耳の聞こえない同級生の女の子に、死ぬ前に謝りに行く男子高校生の話」

という感じ。

 

はじめ原作を読んだ頃は主人公の石田くんのことをそんなに好きになれず、(作中でゆづるちゃんが言ってたように)自分を満足させたいだけの、お前こそ「ただの自分が可愛いだけの奴」じゃねーかという気がしちゃってたんですが

映画では、そもそも石田くんは

純粋に西宮さんと話がしたかっただけであり、

でも周りはなんだか西宮さんのこと敬遠してるみたい、こんな空気感の中で友達になりにいこうとするのは思春期男子として何かが許せないし、でも関わりたい、そうだいじめちゃえ☆(気になる子はからかっちゃうの法則発揮)っていう流れが丁寧に描かれてたので

自然と石田くんに好感持てました。

 

親にも大金負担させるほど取り返しのつかないことして、自身が他人の悪意を受ける側に立たされることになり、以来石田くんは罪の意識に苛まれながら必死でバイトしてお金稼いで、稼ぎまくって、

親に返せる額が貯まった段階で死んで詫びようとしたけど、その前に、手元にある西宮さんのノートを返さないといけない……。

そして、実際に会いに行く。

 

なんというピュア。最初から最後まで結局この子、西宮さんと何がなんでもお話したかっただけの男の子じゃん!  なんというピュア。

石田くんの魅力を再確認する、石田ファンになる出来。

 

 なんとか合う口実が欲しくて、道端でパンの割引券捕まえようとする石田くんとかもう何度見ても良い。

 

 

 

当初、なんだか石田くんに感情移入しきれなかった頃は

高校生になって再会したあと、西宮さんがポニーテール結って普通の女の子になろうと努力しつつ石田くんに告白する場面も頭の中「???????」だったのです。

西宮さん、小学生の頃あんだけいじめられて耳に怪我負って取っ組み合いの喧嘩までしたのに、石田くんのこと好きになるタイミングどこにあったの???

って思ってました。

 

 でもきっと、西宮さん自身、本物の悪意で自分に向かってきてる訳ではないとわかってたんだろうし

わざわざノートを返しに来てくれたこと、

小学生の頃に手話で必死に伝えていた「友達になりたい」っていうメッセージを、時間を超えて理解し、改めて伝えてくれたこと、

全部引っくるめて、漠然とでも、魅力を感じてたんだろーな。

あー。可愛い2人だなー!

 

 

音楽や効果音も素晴らしいです。

語彙が貧困で表現しきれませんが

ぐわあああああっと聴覚を持ってかれる感じ、癖になるというか。

映画館で見るべき映画だな、とも思いました。

 

 

概ね大満足すぎる出来だったのですが、

映画の出来とは別のところで……

登場人物の中で唯一、最後まで感情移入できず、ただただ気持ち悪いだけだった川井さんが残念でしたねえ。

 

植田ちゃんもいけ好かない女だったけど、あの子にはあの子なりの信条があって行動してたんだっていう部分には理解を示す余地はあったと思うし、あの島田くんでさえ最後の最後で石田くん助けたっていう功労で株上げたのに、川井さんだけなんか……なんかなあ……

 

ずるいというか姑息。

好きな男の目ばっかり気にして、自分の都合で事実捻じ曲げて喧伝して、

お前みたいなやつが千羽鶴持ってきたってただのポイント稼ぎだろって思えてならなかったね……

 

唯一、落下事件のあと、西宮さん抱きしめながら

「辛いことなんて誰にでもある!  自分の嫌いなところも、受け入れて生きていかなくちゃ……」って泣き叫んでたところは

自分のことかな?  省みてるのかなちゃんと?  って思えなくもなかったけど

あれも横に真柴くんいたから台無しですよね……うん……っていう。

 

もうここまでくると作品として、川井さんにもどこか救済面あっても良かったかなーと思えてくるレベルでした。

 

 

何はともあれ見て後悔しない映画である事は間違いなし!

原作知らなくてもおすすめです。

なんかTwitter見てると公式ファンブックもすこぶる高評価らしいですねえ。欲しいなー!  探してもどこも売り切れ。悲しみ。

 

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あと、映画見に行ったら貰えました!

一回目は漫画小冊子と、二回目はネガ(って言うの)かな?

同じ市内の映画館でもそれぞれ貰えるグッズが違うのかもしれないですね。

これは映画館はしごだ!!

 

 

 

そしてわたしは、書評ブログなのに平然とした顔で映画感想を挙げるのをなんとかします……。

TOO YOUNG TO DIE!

 

TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ
6/25公開!見てきました。

 

 

「こんな地獄なら落ちてみたいと思える地獄を描きたかった」とお話されていたクドカンさんのおっしゃる通り、死んだあとに地獄が待ってるとしても楽しみに出来るような、はちゃめちゃな地獄が描かれてました。
天国よりも遥かにこっちの方が楽しそう!

 

 

神木隆之介くん演じる大助を含む修学旅行中の高校生35名を乗せたバスが崖から転落。

大多数が天国へいく中、何故か地獄へ落とされた大助は、そこで長瀬智也演じるロックバンド「地獄図」(ヘルズ)のボーカル・キラーKに出会う。
現世に未練たらたらな大助は、再び人間として転生し、片想いのクラスメイトに再会するため修行を開始する! という物語のはじまり。

 

 

「地獄図」(ヘルズ)はじめ、様々なバンドの音楽が作中で鳴り響くので、ギターのガチャガチャした激しい音が八割を占めるくらいの勢いです。こういう音楽が好きじゃない方には苦痛な場面がちょいちょいあるかも。

 

それでもやっぱり、映画タイトルでもある「
TOO YOUNG TO DIE! 」は良い曲です。

 

 

地獄に一度落ちてしまったら、毎週金曜に受けられる閻魔さまのテストに合格しないと転生は叶わず、それも「人間道」へ進める可能性はごく僅か。だいたい「畜生道」で、良くて犬、最悪アブラムシ…………と思うと、人として現世で生きていられるこの瞬間が尊く思えてきます。

 

 

 

 

以降ネタバレになりますが

主人公大助が地獄落ちした理由、
作中では「小なのにトイレの水を大で流したから」「アンプの上に飲み物を置き、挙句の果てにぶつかってそれをこぼしたから」
などとされ、最終的に「おやつのバナナを喉に詰まらせて」自殺、と見なされているんですけど
(地獄では、「自殺」が最も重い罪)

鑑賞後、一緒に見てたうちの母が

「地獄落ちの理由、喉にバナナ詰まらせて苦しんでる時に運転手にぶつかったからだよね」(=そのせいで手元が狂いバスが崖から転落し大多数の生徒が命を落とす結果になった)と言っていて

作中やパンフレット等でも一言も語られていなかったので、本当のところはどうなのかな……と思っています。

 

 

 

深読みできるポイントが他にも隠れていそうな、クドカンワールド全開の、七転八倒ありながらもハッピーエンド、最後まで安心して笑いながら見られる、これこそエンターテインメントだな! と感じられる映画でした。

海賊とよばれた男 上下

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百田尚樹さんの「海賊とよばれた男(上)(下)」
2013年本屋大賞も受賞された作品。
恥ずかしながらこのたび初めて読みました。
 
百田さんの本は、ベストセラーになり映画化もされた有名なデビュー作「永遠の0」や、「モンスター」を読んだことがあります。
どれを読んでも面白く、世界観に引き込まれてあっという間に読み終わってしまう印象。
 
なのでこの作品も期待大で読みました。
さすが、百田さん!
期待裏切られることなく、上下巻の長編ですが、だれることなく最後までノンストップで読めました。
 
 
 
着るものにも食べるものにも困窮するような戦中、戦後の日本。
日本政府はGHQの占領下に置かれ、思うように行政を動かすことも叶わず、敗戦国としての屈辱を味わう中、決してそれに屈することなく、最も大切なのは「国民」と「国家」であると信じて行動し続けた国岡鐵造という人物。
 
この作品中、一貫しているのは、戦前から戦中、戦後にかけて、国岡鐵造率いる「国岡商店」という石油会社が、いかに日本のため、そして日本国民のために尽力してきたか。
 
国岡鐵造という人間1人の英断のおかげで、今の日本はあるんだなと思えるくらい、痺れるような展開の繰り返しで、ある意味だんだん頭が麻痺してくるような感覚にもなります。
 
 
解説で明かされているように、この「国岡商店」は、あの有名な「出光興産」のことで、「国岡鐵造」はその代表者である「出光佐三」その人です。
 
戦後の日本復興については、あらゆる媒体で今日まで語り継がれており、
若い世代にも、漠然とではあれ、大変な時代があってこその平和なのだと、知識として広まってはいるはずです。
 
ただ、より身近な体験談としては触れる機会が皆無に近い。
このような小説があるおかげで、その一端でも知ることができて、日本人としての誇りを再確認出来た方も大勢いると思います。
 
若い人にこそ読まれるべきだと心から思います。
戦後の日本を血肉とする。
その時代に生きた人に、直接会って話を聞くことの難しさに躊躇する前に、この作品を手に取るべきです。
 
 
お気に入りのシーンがいくつもあります。
あえて一つ挙げるとしたら、国内の石油が究極的に枯渇し、GHQを通して外国から輸入しようと動くも、あっさりと拒否され、挙句の果てに「タンク底を浚って油を絞り出せ」とまで言われた後の、鐵造さんの行動。
 
言われた通りにするんです。
過酷だと分かりきっているけれども、家族同然の社員達を各地のタンクへ送り込み、底へ下りて油を浚うように命令した。
 
現代の一般的な会社でこんな仕事させようものなら、ああだこうだと文句ばかりが出て、実際に動こうとする社員なんていないに決まってる!
 
けど、国岡商店の社員たちは違うんです。
それが社長のため、ひいては日本のためになるのならと、1ミリも躊躇せず迅速に行動します。
 
1人10分以内に作業を終えないと呼吸困難で気を失うような現場で、誰一人弱音を吐かず笑顔が溢れた。
現場視察に訪れたGHQのお偉いがその様を見て、後に国岡商店のため便宜を図るよう処置したりする。どんどん味方が増えていく。
 
その瞬間だけの損得で動いても何ら価値は生まれないという教訓も身に沁みるシーンです。
 
 
このような、ハッとさせられる場面も多いこの作品。
まだ読んでない方には、何よりもおすすめします!

能サポ!

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能町みね子さんの「能町みね子のときめきサッカーサポーター略して脳サポ」!

しばらく前に読了していたのですが、
時間を置いて改めて、感想をつらつらと、してみます。


まずこのタイトルからして……ん?!  ですよね。能町さんファンとしてどんなに贔屓目に見てもそそられ過ぎるし、目に飛び込んでくる。どういうこと?!  ってなりますよね。

これは能町さん(と編集担当者スルギくん)が、香川のサッカーチーム「カマタマーレ讃岐」を応援する傍ら、香川のうどんを愛で始め、いつの間にかサッカー応援<うどん食レポになっていく過程を詳らかにした本。

作中でも能町さん自身触れられてますが、カマタマーレ讃岐っていう名前がね!  もう、ね!
素晴らしいの一言です。
マークにもうどんが入ってる徹底ぶり。
香川に行ったこともなければうどんを食べたこともない、そもそもサッカーどころかスポーツ全般ルールを知らない観戦もしないわたし。

そんなわたしでも素直に応援したくなるようなネーミング。感服。
釜玉うどんからきているのはもちろんですが、そこから「ーレ」に繋がってくるのが単純なようでいて、意表を突いてくる展開。

この本を読んで、わたしはサッカーのサの字も知りませんが、やたらとカマタマーレ讃岐にだけは詳しくなりました。
あと、うどん。

能町さんの、期待を超えてくる軽快で読みやすい文章は、毎度のことながら気付いたら読み終わってる勢いなので、今回は意図的に「1日1章しか読まない!」って制限をかけたくらい。

「能スポ」を読んだ時も思いましたが、わたしにとって、読むことが苦にならない文章においては、能町さんの右に出るものはいないです。

うどんの食レポも、一箇所残らず現地に行って食べたくなる……。
香川のうどんって今更何を言われなくても「掛け値なしに美味しいもの」ですが、食べたことがない身としてはまだまだ未知なもので、読めば読むほど食べたくて仕方なくなりました。

それはそうと、
美味しいうどんほど、温よりは冷で食べた方がいいんですね!
きゅっと締まって、よりコシが引き立つものらしい。世間では常識なんでしょうか……?  そんなこともこの本で初めて知りました。

生涯で一度は香川に行くべきだー。
行きたい香川!
食べたいうどん!

番外編?「世界から猫が消えたなら」

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14日から公開されている映画「世界から猫が消えたなら」見てきました。

4年前から猫と2人暮らしをしている、ごく普通の郵便配達員である「僕」。
とある日なんの前触れもなく悪性脳腫瘍があることが発覚し、余命僅かだと宣告を受け途方に暮れる。
そんなとき、自身と全く同じ姿形をした「悪魔」が目の前に現れ、ある取引を持ちかけられる。

「この世界から何かひとつ物を消す代わりに、1日分、命が延ばしてやる」

迷った末、「僕」はその契約を交わしてしまう。命を1日だけ長らえさせる代償として、この世から様々な物が消えていく。
電話、映画、時計……。

自分の命のためだけに、果たして犠牲にしていい物だったのか。そこに何の意味があるのか。
自分の命ってなんだ?
生きるってなんだ?
一番大切なものって、なんだ?

もう1度、自分自身と重ね合わせて、生き方を見つめ直す物語。







原作、映画と合わせて、感想をつらつらしようと思います。

以下、大変なネタバレであり、これから読もうとしている方、見に行こうとしてる方にはおすすめしません!

既に原作を読み映画も見ている方に「あ~~!  わかる~~~!」と共感してもらいたいがための記事となります。
よろしく。












好きなポイント1「トムさん」

主人公「僕」と「彼女」がまだ付き合っていた頃、アルゼンチン旅行中に出会う、バックパッカーのトムさん。

原作でも映画でも印象に残る台詞があるんです。

「時間を分や秒に区切っているのは人間だけだ」

時間に縛られず、自由に旅をしながら生きている彼が言うからこそ、ズシッとくる言葉だなあ、と思います。

「時間」という概念そのものがなくなったら生きやすいだろうなあ。そう思いませんか?

焦ったり、急かしたり急かされたり、他人から影響を受ける要因には少なからず、「時間」は大きい範囲を占めていると、この言葉を聞いて実感しました。

昔々から日時計や砂時計があったくらいだし、人類にとって必要だからこそ生み出された概念ですが、時間に追われることがなくなったら心にはさらに余裕がうまれ、鬱をはじめとした精神病も大なり小なり、その成を潜めると思うんですよね……。









好きなポイント2「世界から映画がなくなったら?」

嫌だなあ。
映画もそうだけど、この世から本がなくなったらそれも、嫌だなあ。発狂ものですよね。書店や図書館が忽然と姿を消したら生きる意義の9割は消滅する。舌を噛みきると思う。

主人公「僕」の、大学時代からの唯一の親友である「ツタヤ」(本名はタツヤ)。

無類の映画通で、暇があれば映画を見、大学でも映画雑誌を片時も離さない筋金入り。
同じく映画好きの「僕」と意気投合し、ふたりの関係は映画で作り上げられていきます。

この大事な役を濱田岳さんが演じているんですが、作中でこう言う台詞があります。

「映画は無限にある。だから、俺たちの関係もずっと続く」

毎日、「僕」が見るべき映画のDVDを持ってきてくれる彼。
「なんだかツタヤみたいだな」
「(本名は)タツヤだけどな」
このお決まりのやり取りは、お互いに大学を卒業し、「僕」は郵便配達員として、ツタヤはレンタルショップ店長として働くようになってからも続く。

男性同士のコミュニケーションって、純粋に「趣味だけ」で成立するパターンが多いイメージあります。

野球とかサッカーとか、ギャンブルとかお酒とか。
仕事の愚痴とかもたまにはあるんだろうけど、女性のそれより格段に少ないと思うんですよね。
ゴルフとかもそうですけど、一つのワードから派生していって延々とその話だけで場をまわせる。あれはすごいなあ。


「僕」とツタヤの間にも、ある種の空気感というか、マイノリティを突き詰めた者同士通じ合えるものを長年共有している。

人見知りなツタヤにとって救われるやり取りだった。ずーっと続くと思っていたこの関係が、不可抗力でなくなってしまうのを、どうにも出来ないと知った時の悲しみと、閉ざされた絶望。

取り乱した自分を第三者に見られることにも気を配れない程の混乱。

濱田岳にしか演じられないなあ、と素直に思いました。

最後の最後で、
「こんな時、何を言えばいい?」
涙を流しながらただ問うツタヤに、海の上のピアニストの、あの有名な台詞でいつも通りに返す「僕」。

わたしはあのシーンが一番好きです。
人によってグッとくるシーンがそれぞれ違うのもこの映画の特徴だと思いますが、わたしにとってはあれが一番。








好きなポイント最後「イグアスの滝

アルゼンチン旅行中に不慮の事故で亡くなってしまったトムさん。

彼の口癖だった「生きてやる!」
荘厳な滝の前で全力で叫びつづける宮崎あおいちゃんのシーン。圧巻。

この時のあおいちゃんも、
「こんな時、何を言えばいい?」と訊いた濱田岳も、
母親の車椅子を押しながら泣いた佐藤健も、
海辺で妻と息子の写真を撮ろうとして涙で震えて手元が定まらなかった奥田瑛二も、
みんな演技で泣いているようには見えなかったんだよなあ。

台詞を言って、役に成り切っての感情から涙が出た、っていうよりも
それぞれの役者自身の生の感情が思わず溢れでた、という感じがした。

それくらい自然というか、頑張って泣いてます感がなかったから、受け手としてもごく素直に移入できたんだと思います。






生き方とか、命に対する考え方に、正解はないんですよね。
正しいとか間違いとか、価値観の上で語るものじゃない。
言葉は知ってるし頭ではわかるけど、というやつ。
自殺の是非をとか尊厳死問題とかいろいろね、ありますけど、法や倫理で縛る前に、ひとりひとりの頭で考える絶対量が足りてないと思ってしまいます。

そんなことを考えさせてくれる、よい作品です。