おひとりさま

@yuu_uu_ 本の感想ブログ

海賊とよばれた男 上下

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百田尚樹さんの「海賊とよばれた男(上)(下)」
2013年本屋大賞も受賞された作品。
恥ずかしながらこのたび初めて読みました。
 
百田さんの本は、ベストセラーになり映画化もされた有名なデビュー作「永遠の0」や、「モンスター」を読んだことがあります。
どれを読んでも面白く、世界観に引き込まれてあっという間に読み終わってしまう印象。
 
なのでこの作品も期待大で読みました。
さすが、百田さん!
期待裏切られることなく、上下巻の長編ですが、だれることなく最後までノンストップで読めました。
 
 
 
着るものにも食べるものにも困窮するような戦中、戦後の日本。
日本政府はGHQの占領下に置かれ、思うように行政を動かすことも叶わず、敗戦国としての屈辱を味わう中、決してそれに屈することなく、最も大切なのは「国民」と「国家」であると信じて行動し続けた国岡鐵造という人物。
 
この作品中、一貫しているのは、戦前から戦中、戦後にかけて、国岡鐵造率いる「国岡商店」という石油会社が、いかに日本のため、そして日本国民のために尽力してきたか。
 
国岡鐵造という人間1人の英断のおかげで、今の日本はあるんだなと思えるくらい、痺れるような展開の繰り返しで、ある意味だんだん頭が麻痺してくるような感覚にもなります。
 
 
解説で明かされているように、この「国岡商店」は、あの有名な「出光興産」のことで、「国岡鐵造」はその代表者である「出光佐三」その人です。
 
戦後の日本復興については、あらゆる媒体で今日まで語り継がれており、
若い世代にも、漠然とではあれ、大変な時代があってこその平和なのだと、知識として広まってはいるはずです。
 
ただ、より身近な体験談としては触れる機会が皆無に近い。
このような小説があるおかげで、その一端でも知ることができて、日本人としての誇りを再確認出来た方も大勢いると思います。
 
若い人にこそ読まれるべきだと心から思います。
戦後の日本を血肉とする。
その時代に生きた人に、直接会って話を聞くことの難しさに躊躇する前に、この作品を手に取るべきです。
 
 
お気に入りのシーンがいくつもあります。
あえて一つ挙げるとしたら、国内の石油が究極的に枯渇し、GHQを通して外国から輸入しようと動くも、あっさりと拒否され、挙句の果てに「タンク底を浚って油を絞り出せ」とまで言われた後の、鐵造さんの行動。
 
言われた通りにするんです。
過酷だと分かりきっているけれども、家族同然の社員達を各地のタンクへ送り込み、底へ下りて油を浚うように命令した。
 
現代の一般的な会社でこんな仕事させようものなら、ああだこうだと文句ばかりが出て、実際に動こうとする社員なんていないに決まってる!
 
けど、国岡商店の社員たちは違うんです。
それが社長のため、ひいては日本のためになるのならと、1ミリも躊躇せず迅速に行動します。
 
1人10分以内に作業を終えないと呼吸困難で気を失うような現場で、誰一人弱音を吐かず笑顔が溢れた。
現場視察に訪れたGHQのお偉いがその様を見て、後に国岡商店のため便宜を図るよう処置したりする。どんどん味方が増えていく。
 
その瞬間だけの損得で動いても何ら価値は生まれないという教訓も身に沁みるシーンです。
 
 
このような、ハッとさせられる場面も多いこの作品。
まだ読んでない方には、何よりもおすすめします!