おひとりさま

毎日読んだ本の感想を書いています。

旅猫リポートを読みました

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主人公・宮脇悟とその飼い猫・ナナ♂の、1人と1匹でむかう最後の旅のはなし。車にはねられ足を折ってしまったナナを介抱し、それがきっかけで飼い始めることになった冒頭部から、共に過ごした五年間の生活は一切語られず、ある日、よんどころない事情の元、ナナを飼い続けられなくなった悟は、新しい引き取り手を探すための旅にでます。この物語は、転校の多かった悟の小・中・高それぞれの旧友の元を訪れ、引き受け手をさがす旅の模様を描いたはなし。

 

いいやつなんだよ悟が。こんなやついないだろって思う。そこにリアルはないんだけど、でも不思議な実在感がある。温度がある。絶対にこんないいやつ実際にはいないんだけれど、でも悟はいるな、どっかに存在してるな、っていう。やんちゃでひょうきんなようでいて、人の機微はちゃんとひろえる細やかさを内包しておおきくなった。いい男だ。猫ばかっぷりもよく出ててこっちがにやにやしてきます。かわいい。ナナ♂もいいキャラしています。

 

なかなか引き取り手はみつからないんだけれど、残念なようでいてお互いにどこかホッとしている距離感。人間と猫でこんなに波長が合うもんなのかしら。現実のことなんて知らないけれどこの子らにはあり得ると思える。わたしも一緒に旅をしてきたから。おいしい空気を吸って、自然が出すおおきな音をきいて。

 

有川浩さんだいすきで、「塩の街」という作品を読んだとき、むせび泣いて目と鼻が痛くてぐじゅぐじゅになるくらいそれはそれは泣いたことを今でも忘れられない。強烈な読書体験というものがあるならまさにあれだった。この人は、こういう風に人をみている、心の奥深くまでさらけだそうとしている、私たちが、本当は覚えてなけりゃならないのに忘れがちなものを掬い上げて見せてくれる。漠然と、信じてもいいんだと思える。確かに彼らはここにいたんだ。