ビジネス書が読めなくなる本
完全にタイトルに惹かれて手に取りました。私自身、自己啓発書やビジネス本は好きでよく読んでるので、影の実情を知る取っ掛かりになるかとおもって。読んでみたら想定以上にすごいことになっている。
新卒入社当初、いわゆるビジネスマナーが羅列されたビジネス書は漁って読みました。〇〇な仕事のコツとか女性のビジネスマナーとかそういうのです。大体、書店や図書館では自己啓発書とは別の括りでコーナー設けてありますよね。
完全に持論ですが、こういったビジネス書は数を読んでも意味はない。知りたいテーマを絞って読めば良くて、有名な経営者やコンサルタントや医者やタレントが書いてるからっていう見え透いた触れ込みから選ぶべきじゃない。大体ゴーストライターの筆だというのは意外でもなんでもないしそうだろうな、とおもう。
単にビジネスマナーだけを知りたいなら関連書を2~3冊読めば充分です。ビジネス書というジャンルには他にも
「睡眠を見直せ」
「集中力を高めるには」
「職場の人間関係」
それから少しスピリチュアル寄りだと
「引き寄せの法則」
「マインドフルネス」
などなどのテーマが主だと思うので、著者で選ぶよりも知識を得たいテーマで選んで数冊読んだら次にいく、くらいがいいです。
ゴーストライターありきの「ビジネス書」
この本によると、大手・中小問わず出版社では担当部署の編集者1人につき年間15~20冊前後のビジネス書発刊がノルマとしてある。コンスタントにこなすためにはゴーストライターなしではもはや成立しない仕組みになっているそうです。
総じて「著者」は本の作り方、まして文章の組み立て方も知らないために流れを無視して言いたい放題喋るのみ。本として成り立つよう章立てから組み上げるゴーストライターの報酬取り分は約2割。
予定通り取材が行われればまだ良い方で、変に自己顕示欲もプライドも高い経営者・コンサルタントは直前で取材をドタキャンしたり、上がったゲラ刷りに余計な茶々を入れて進行を滞らせたりもする。
割に合わず、食べていけないライターも多いそうです。闇が深いですね。
職業として成立している
「著者」は書く時間がないと言って自分では書かない(本作の筆者は「単に書けないだけ」とはっきり断じている)だから代筆してほしい、編集者は発刊ノルマをクリアしたい、ゴーストライターは仕事が欲しい。
たとえ自分では書いていなくとも、求心力のある経営者・コンサルタントが「著者」として据えてあれば自ずと売れる。それが売れる仕組みだからである。
三者の利害は一致しているのでこのようなビジネスモデルが成り立つ。最早ライターではなく「ゴーストライター」として職業が成り立っている側面があります。
出版市場の低迷を打開するためには、売れる本を作り続けなければいけない。そのためには「有名な」著者の名前で本を出す。編集者側としては、年間でいくつかのヒット作を出すには半ば流れ作業になってでも複数冊の作業を並行で進めるしかない。
そのためにはゴーストライターを使う以外に時間のやりくりをする術がない。
ゴーストライターとしては、その現状や立場に甘んじるのではなく、他にも複数の収入を得るパイプを確保すること。
そのためには各々のスキルアップはもちろんのこと、信頼を得るためのインフラを整える(髪型や服装を一般的な社会人レベルにするとか)、そして巻末に「編集協力」として署名を加えてもらうことが急務。
筆者本人の推測や妄想なんかは介入していなくて、信頼できる筋からの証言を元に事実だけが書かれているので、何が問題なのかが明確にわかりやすいです。
価値のあるビジネス書もあるよ!
本作を読んだあとは巷のビジネス書を読む気が100%失せるんですけど
自己啓発書も含め、ビジネス書には読む価値のあるものもたくさんあるよ!救われるものもあるよ!と言いたいです。
「自分が何を知りたいか」ということに重きを置いて本を選べば間違えないし損もしないし、旬な人とか何十冊も本出してる人とかに気をつければ、あとは自由に読めばいいですよ。