おひとりさま

@yuu_uu_ 本の感想ブログ

「殺人鬼フジコの衝動」

 

子どもにとっての親は神様。子どもにとっての神様は親。善悪の基準だとか「あれやりたい」「これやりたい」という欲望の方向性だとかも、親の意見や態度、普段の会話の言葉の端々から影響を受けるもの。

 

心から尊敬できる両親のもとに生まれることができれば良かったのに、と本作の主人公「フジコ」の言動や行動を追っていて切実に思った。

彼女は親からの支配に囚われてしまっただけ。認めてほしい、愛してほしい、そんなことよりも、自分の存在を「そこにいるもの」として頭の片隅にでも良いから置いてほしい。そんな欲望が彼女を囚えた。支配も独占も必然だった。

親は神様だから。

 


真梨幸子さんの作品は初読みだったんですけれど、タイトル通り血なまぐさい文章の羅列が続くので気分が悪くなる人もいると思います。

本当に人をころしたことがあるんじゃないかと思うほど描写がリアルで文字から血の匂いがしてくる。

 

酒に溺れる父親、見栄っ張りで金遣いの荒い母親に育てられた「フジコ」。教室で飼っていたカナリヤをころしてしまった“容疑”をかけられ、証拠隠滅しようとそのからだを羽の先まで切り刻みゴミ箱に棄てたあたりから彼女の人生は狂いだす。

 

ばれなきゃ悪いことにはならない、ぜんぶぜんぶ棄ててしまえばいい。

それを口癖に、「フジコ」という人間にとって足りない部分を、パッチワークで補うみたいにして、取り繕うようにひとの死を塗り重ねていった。

認められなかった彼女は「承認欲の化け物」になった。

たったひとりで。

 

 

いわゆる「イヤミス」として傑作だとわたしは思います。

転げ落ちる彼女の顛末に伴って明るみになる、ほんとうのこと。

「フジコ」がひとりにならない結末を夢想しています。




 

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)