おひとりさま

@yuu_uu_ 本の感想ブログ

金曜のバカ

 

本作の中に、『お客様がだんだん人に見えてくる、自分と同じ人だと思うことでいい感じに力が抜けてくる』というような記述があって、学生時代に初めてアルバイトをした時とかに、こういうことを意識できていたらもっと楽だっただろうなあとおもう。

 

まだ自分の仕事ぶりに自信が持てなくて、やることなすこと間違ってるんじゃないかってびくびくしながら食事運んだりレジ打ったりするのってものすごくストレスで、「お客様」は「お客様」という人種としてしか捉えられないから、どんな些細なミスでも猛烈に怒られるに違いないと信じてこわくてこわくて消えたくなったりする。

 

この作品は越谷オサムさんの短編集で、表題の「金曜のバカ」以外にも「星とミルクティ」とか「この町」とか魅力的な短編が詰まっています。

若さゆえの迷い、みたいなものがどの登場人物にもあって、歯がゆくなるしドギマギするし、私ならどうするか、とか取り留めもなくぐるぐる考えてしまう。

 

特に「この町」っていう短編には、東京に憧れる男子高生が出てくるんだけれど、私は生まれてこの方10代の時も、都会に対する渇望や憧れみたいなものなかったなあ、と。

大学に通うために地元を離れて一人暮らしして、就職のためにまた住む場所を変えて、特に理由もなくパッと引越ししたりとか、暮らしてきた町に愛着が湧かない性質なんだなあって自分のことがまたひとつ知れた気がしました。

 

これは読書の醍醐味、よなあ。

 

越谷さんの本は「階段途中のビッグ・ノイズ」という作品を読んだことがあって、それは廃部寸前の軽音楽部が再起する青春小説なんだけれど、続けてこの短編集を読んだせいですっかりこの著者には“フレッシュな10代が出てくる青い小説を書くひと”っていうイメージが定着した。

 

越谷さんといえば一番有名なのはおそらく「陽だまりの彼女」だとおもう。

ふわっと聞こえてくる風のうわさでは最後の最後でどんでん返されるミステリーらしいので楽しみ。


 

金曜のバカ (角川文庫)

金曜のバカ (角川文庫)

 

 

 

階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)

階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)