川村元気さんの「四月になれば彼女は」を読んださらっとした感想
「四月になれば彼女は」 川村元気著
映画プロデュースで有名な川村元気さん。「電車男」から始まって、直近で言うとあの「君の名は。」のプロデュースにも関わってるすごい人。
私は佐藤健さん主演で映画化もされた「世界から猫が消えたなら」がすこぶる好きで、過去にレビューも書いております。
そんな川村氏の最新小説「四月になれば彼女は」を読みました!
自分が何を考えてるかわからないとか
自分の好きなものがよくわからないとか
人に対する愛情が本物なのかわからないとか
そういう悩みを根底に抱えてる主人公。
私自身も抱えてる自覚がある問題が並べられていて、読んでいる最中どこか安心してしまいました。
たぶん25を超えたくらいから、他人にも自分にも必要以上に興味が持てない性質は、病名がつくレベルのものかそうでないのか判断がつかなくなっていて、いまは半ば諦めています。
それでも、そんな状態であっても、たとえ受け入れられなくても、向き合おうとする気持ちが少しでもあれば許してあげてもいいんじゃないか、と思えるようになりました。
大学の頃に写真部で出会った主人公・藤代と新入生ハル。
二人は清潔な恋の中にいて、お互いがお互いに向ける気持ちは正しいものでずっと変わらないと何故か思っていた。けれどその恋愛だけが例外として進んでいくことはなく、ちょっとした掛け違いと諦めで簡単にそれは終わってしまう。
それから時は経ち、藤代はハルとは違う女性と結婚を決めた。ハルとの生活は確実に過去のものになり、結婚式の準備が着々と進んでいく。
妻となる女性・弥生は獣医をしており、自分の意見をしっかりと持ったある意味主張の強い人。
少しづつ会話は少なくなっていくけど、食事や映画の趣味は合う。
不思議と、好きなものよりは嫌いなものが被ることが多い。
お互いの気持ちが見えなくなる瞬間はあるけど、夫婦になるっていうのはそういうことだと割り切っている。
そんな中、思い出の中にいたハルから一通の手紙が届く。
まっ正直な感想を言うと
川村さんの今までの作品と比べると、いわゆる「強い色」みたいなものはない。
起伏がなくテーマが溶け込んでいるようにもみえる。読んでいて途中で投げ出す人もいると思う。
けど、似たような記憶とか悩みとか痛みとかをかかえた人間にはどうしようもなく響く話だと思います。